千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
 助けてもらうはずの私が彼を助けるの? それじゃまるであべこべじゃない。

 そう思ったらじわじわとおかしくなってきて、思わず「ふふっ」と小さな笑いが漏れた。

「今笑ったね」
「あ……」

 慌てて口元を手で押さえる。
 一生懸命に私を助けようと言ってくれているのに、笑ってしまうなんてさすがに失礼だった。急いで謝ろうとしたら、彼が先に口を開く。

「うれしいな」
「え?」

 予想外のセリフにまぶたをしばたたく。すると彼は、きりりと横に伸びた眉を下げた。

「昨日からずっと困ったような顔ばかりさせていたからね。たとえ理由がなんであれ、笑顔が見られてうれしいよ」

 そういうふうに言われるとは思いも寄らず、冷たい態度ばかり取っていたことが申し訳なく思えてくる。

「……わかりました。お言葉に甘えて、少しの間ご厄介になります」
「よかった……ありがとう」

 表情を明るくした彼にお礼を言われて、なんとも言えない面映ゆい気持ちになった。
  

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