千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
 ゲストルームにはベッドやミニデスクだけでなく、小型の冷蔵庫やバスルームまでが備わっており、まるでホテルの客室のようだ。主寝室も同じようにバスルームがあるそうなので、お互いに一旦自室に入ってしまえば、まったく顔を合わせずに生活ができるという、それを聞いて心底ほっとした。

 とはいえキッチンは一階にしかない。食事のたびに東雲さんと顔を合わせるだろうと思い、内心どきどきしていたが、それも今のところ杞憂となっている。

 初日の夜は、一緒に食事を取りながら家のことをひと通り教えてもらったけれど、その後彼は『仕事をするから』と言って自室へと入ったきり出てこなかった。

 翌日も、日曜だというのに彼は朝早くからスーツを着て出て行き、夜遅くまで帰ってこなかった。

 そして三日目となる今朝。出勤するために身支度を整えた私が朝食を取りに一階へ下りると、彼はちょうど出勤するところで、挨拶だけ交わすとすぐに出かけていった。

『仕事が忙しくてほとんど家にいない』というのは嘘ではないらしい。

 私も、避難先からの初出勤にすこし緊張したけれど、道や乗り換えにあまり迷うことなくスムーズに会社にたどり着くことができた。

< 43 / 177 >

この作品をシェア

pagetop