千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
私達、どこかで会っているの? ――いや、そんなことがあるはずない。私はここから遠く離れた九州の地からやって来たばかりなのだ。年齢も離れているし、もしどこかで交流があったとしても、輝くような容姿を持った彼を一度でも見て、微塵も記憶に残らないなんてことがあるだろうか――。
やっぱり考えすぎなのかもしれない。そう結論に達したところで「美緒?」と呼びかけられた。視線を上げると、しょんぼりしている彼と目が合った。その表情が飼い主に叱られた大型犬に似ていて、思わずくすっと笑いそうになる。それをごまかすようにこほんと咳ばらいをしてから口を開いた。
「出していただいたお金はすべてお返しします。さっきのお買い物はもちろん、先週のレストラン代も全部。部屋をお貸しいただくだけで十分です。どうしても私のものを買うと言うなら、別の場所に移ります」
最後のひと言に東雲さんが顔色を変えた。
「いや、そこまでしなくても――」
彼の言葉を遮るべく私は首を振る。
「ただ、今すぐ一括で、というのは無理なので、時間をいただけませんか? お願いします」
自分で返すと言っておきながら分割をお願いするなんて、厚かましいと思われただろうか。それでも今の私にできることがここまでなのだ。
やっぱり考えすぎなのかもしれない。そう結論に達したところで「美緒?」と呼びかけられた。視線を上げると、しょんぼりしている彼と目が合った。その表情が飼い主に叱られた大型犬に似ていて、思わずくすっと笑いそうになる。それをごまかすようにこほんと咳ばらいをしてから口を開いた。
「出していただいたお金はすべてお返しします。さっきのお買い物はもちろん、先週のレストラン代も全部。部屋をお貸しいただくだけで十分です。どうしても私のものを買うと言うなら、別の場所に移ります」
最後のひと言に東雲さんが顔色を変えた。
「いや、そこまでしなくても――」
彼の言葉を遮るべく私は首を振る。
「ただ、今すぐ一括で、というのは無理なので、時間をいただけませんか? お願いします」
自分で返すと言っておきながら分割をお願いするなんて、厚かましいと思われただろうか。それでも今の私にできることがここまでなのだ。