千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
「わかった」

 沈黙後、彼の答えに胸の内がぱっと明るくなった。――が、すぐに「ただし」と言われる。

「分割で払ってもらうのは別のものにしてほしい」
「別のもの?」
「ああ。きみの時間と体が欲しい」

 瞬間息をのんだ。時間と体って……。
 長澤さんとのことが思い出され、思わず自分の二の腕をぎゅっと抱きしめた。

「いや、時間と体と言っても、いかがわしいことをさせたいわけじゃないから。いや、ある意味いかがわしいかもしれないな……でも君を危険にさらしたりはしない。ちょっと代役を頼みたいだけなんだ」
「代役?」
「ああ。両親に紹介する恋人のね」
「恋っ……」

 思いがけない要求に言葉が続かない。そんなことは無理だと断ろうとしたが、彼の方が早い。

「近頃両親から結婚のことを何度も言われて困っているんだ。そういう相手がいないなら見合いをしろとうるさくてね。いいかげんこのあたりで恋人でも紹介しておかないと、親の勧める相手と結婚させられそうだ」

 ほとほと困った、とでも言いたげな顔だ。

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