千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
　東雲さんと一緒に朝食を取るようになって、一週間がたつ。
　最初私は、居候させてもらっているお礼として私が朝食を用意するものだとばかり思っていた。けれどそうではなかった。東雲さんは作るところから片づけるところまで、毎回すべてを一緒にやってくれる。

　さらに驚いたのは、彼がとても料理上手だということだ。特に今食べているオムレツはふわふわとろとろで、レストランで出されてもおかしくない。初めて食べたときからひそかに魅了されている。

『男性からおいしいものをもらう』という状況が同じだったせいで、あんな夢を見たのだろうか。

「美緒」

　向かいからかけられた声に顔を上げる。

「きみのことが両親の耳に入ったようで、会わせてくれと言われている」
「え……」

　寝耳に水の言葉に箸を持つ手が止まった。

　どうやら彼のご両親は、津雲屋の支配人から私のことを聞いたそうだ。『運命の人』などと冗談を言ったせいで、完全に誤解されたのだ。

　遠慮してその場で誤解を解かなかったことが今になって悔やまれる。と同時に、彼だけでなくご家族も支配人と顔見知りだという事実に気がついた。
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