千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
 結論から言うと、私が使う予定にしていた部屋を彼に譲ることで解決した。

 ダブルブッキングの原因はこちらにも落ち度があった。まずはそのことも謝罪し、別の部屋を手配するため会議室の使用状況を確認したが、こんなときに限って全室が埋まっている。使用人数を尋ねると、私が使う予定にしている部屋でどうにかなりそうだった。使用人数的にギリギリですが――と前置きしたうえで、そこなら午前中いっぱい使用可能だと提案すると、すんなりと受け入れてもらえた。

 ダブルブッキングを引き起こした原因は単純なものだった。

 若手の彼が外回りに出る直前に会議室の予約が必要なことを思い出し、その場にいた受付社員が『それなら自分が』と会議室予約を買って出た。彼は渡りに船とばかり、彼女に任せて外に出た。

 問題は、受付社員が予約を処理せず放置したことだ。そのせいで空き状態となっており他の予約が入ってしまった。

 会議室の予約状況は、社内サイトで確認できる。そのため、頼んだ方も確認しようと思えばできたはずだ。けれど、総務課員である受付が引き受けた以上、その時点で予約が完了したとみなしてもおかしくない。

 受付担当には『気をつけてください』と注意するだけのことなのだが、それがいつもよりも気が重く感じるのは、その社員が久保田あいりだからだろうか。

 彼女は受付を担当している時間帯だったため、手が空いたら私のところへ来てもらうよう連絡を入れた。


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