千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
「今日は残業だって言ってたのにー、なんで他の女といるのよお」
甘ったるい声でそう言ったのは、私と同じ総務課で契約社員の久保田あいりだ。
鮮やかな赤いリップと涙袋、ゆるく巻かれた明るいブラウンヘアは、昼間会社で見たときと同じ。違うのは、受付の制服ではなく、ざっくりとしたタートルニットにハイウエストのミニスカートを合わせているところくらいだ。年は私とひとつしか変わらなかったはずだけれど、実際の年齢よりもかなり若く見えた。
「あいりのことだけだって言ってたのに……あれは嘘だったの⁉」
甲高い声が響き、周りからの視線を感じた。このままではお店の迷惑になってしまう。
久保田さんの雰囲気からいって、ふたりの間柄はただの同僚とは思えない。それならなおのこと私はお呼びではない。
「私、帰り――」
「このことは伯父様に報告するから!」
帰りますと言いかけた言葉を、久保田さんの声がさえぎった。直後、隣から「伯父って……」と聞こえる。
「ここの松井常務よ? 言わなかった?」
長澤さんが「うっ」とうなるのが聞こえた。総務課の中では、久保田さんが縁故採用だということはひそかにささやかれていたが、まさか常務の姪だったとは。長澤さんも知らなかったのか、見るからに顔色が悪くなっていく。
甘ったるい声でそう言ったのは、私と同じ総務課で契約社員の久保田あいりだ。
鮮やかな赤いリップと涙袋、ゆるく巻かれた明るいブラウンヘアは、昼間会社で見たときと同じ。違うのは、受付の制服ではなく、ざっくりとしたタートルニットにハイウエストのミニスカートを合わせているところくらいだ。年は私とひとつしか変わらなかったはずだけれど、実際の年齢よりもかなり若く見えた。
「あいりのことだけだって言ってたのに……あれは嘘だったの⁉」
甲高い声が響き、周りからの視線を感じた。このままではお店の迷惑になってしまう。
久保田さんの雰囲気からいって、ふたりの間柄はただの同僚とは思えない。それならなおのこと私はお呼びではない。
「私、帰り――」
「このことは伯父様に報告するから!」
帰りますと言いかけた言葉を、久保田さんの声がさえぎった。直後、隣から「伯父って……」と聞こえる。
「ここの松井常務よ? 言わなかった?」
長澤さんが「うっ」とうなるのが聞こえた。総務課の中では、久保田さんが縁故採用だということはひそかにささやかれていたが、まさか常務の姪だったとは。長澤さんも知らなかったのか、見るからに顔色が悪くなっていく。