千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
 私だってやるときにはやるんですから。

 鬼の首を取ったかのような気分になりながら、「いただきます」と言って琥珀糖に手を伸ばすと、横から伸びてきた手に箱ごと奪われた。

「あ!」

 ひどい。約束が違います! と抗議しようとした瞬間、琥珀糖をつまんで差し出された。

「はい、どうぞ」

 受け取ろうと手のひらを出すが、一向に琥珀糖は落ちてこない。

「違うよ、美緒。口を開けて」
「え……」

 目を見張った私の口元に彼の指が近づいてくる。このままでは彼の指先が私の唇に当たってしまう。
 あと数ミリで触れるというところで、慌てて口を開けた。

 ころん、と舌の上に琥珀糖がのった。彼の手が離れていくのを見ながら口を閉じる。シャリッとした食感の後、柔らかなゼリーを噛む。口の中に上品な甘みと爽やかな柑橘の香りが広がった。

「真っ赤だね」
「……っ」

 自分でもわかっていたけれど、他人に指摘されるほど赤面するのは初めてだ。
 まさか人生初の『あーん』を体験することになるとは思わなかったのだから仕方がない。

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