千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
「チャレンジって……今日もやるんですか⁉」
「直前こそ大事だろう?」

 本番でぼろが出ないよう前もって慣らしておくのがいいと言われれば、反論のしようがない。

 名前呼びから始まったチャレンジは、その後、ソファーに横並びで座るという接近を経て、握手や頭を撫でるなどの軽いスキンシップにまで、どうにかたどり着いた。

 けれど新たなチャレンジをするたび、心臓の音が外まで漏れているのではないかというほどドキドキし、ごまかしようがないほど顔が赤面してしまう。
 正直この後に待ち受ける緊張を考えたら、それまでは心穏やかに過ごしたいところだ。

 返事ができずに動きを止めていると、智景さんがまた何やら紙袋から別の箱を取り出した。

「今回のご褒美はこれだよ。津雲屋に来月オープンするショコラティエのボンボンショコラ」

 箱に書いてある名前を見て思い出した。確かベルギーの老舗ショコラティエで、今回日本に初出店だとテレビや雑誌で話題になっていた。

 実はボンボンショコラはすきなスイーツの上位で、食べたことのない店のものは必ず買ってしまう。新店のチェックも欠かさない。
 話題店のものを、オープン前に食べる機会なんてそうそうない。

 イヤリングをつけるくらいなら、たいした触れ合いじゃない……よね?

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