スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
「どうだろう? あなたのために東の国から取り寄せた茶だ」
「ありがとうございます。とても美味しいですわ」

 ふたりが会話をしていると、全員がめずらしそうに注目した。
 それも、毒気のある表情だ。

「あの嫁は立場がわかっているのか?」
「ライザスさまに馴れ馴れしいな」
「お飾り嫁のくせに」

 次々と心ない言葉を浴びて、リリアは複雑な心境で唇を引き結ぶ。

(仕方ないわ。この立場ならみんなそう思うもの)

 最近ライザスがあまりにも妻の扱いをしてくれるものだから、リリアは忘れていた。
 自分が出来損ない魔導士の【贄嫁】であるということを。
 非難を浴びることは最初からわかっていたのだから、ほんの少しのあいだ我慢すればいい。

 リリアがそう思っていると、ライザスはいきなり彼らに言い放った。

「俺は妻を愛している」

 ぶはあっとひとりの男が茶を噴き出した。

「ちょっと、汚いわねぇ」

 とローズが男を睨みつける。

 茶を噴いた男はライザスを見て口をへの字にした。
 他の者たちも呆気にとられている。
 だが、ライザスはさらに続けた。

「あなたがたに伝えておきたい。俺は妻を愛し、慈しんでいる。今は何よりも妻が大切だ」

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