スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
ライザスは紅茶を飲み干したあと、静かにカップを置いて立ち上がる。
残っている仕事を片づけなければならない、と彼は言った。
リリアも慌てて立ち上がる。
「あなたはゆっくりしていくといい。では失礼する」
「はい」
ライザスはリリアに会釈をしたあとさっさと立ち去ってしまった。
リリアは笑顔で彼の背中を見送ったが、その姿が見えなくなると表情から笑みが消えた。
少しだけ物足りない気持ちになっていることに、気づいている。
ライザスはリリアへの愛情を完全になくしたわけではないようだった。
それは【慈愛】の効果なのかもしれないが、おかげで以前のようにベタベタくっついてくることはなく、周囲はやっと主人がまともな姿に戻ってくれたと喜んだ。
しかし、ライザスはあれから夜をともにすることもなくなった。
邸宅内でばったり会えば会釈をする程度である。
一緒にティータイムを過ごすときは穏やかに歓談するし、晩餐のときも少しばかり会話をする。
ライザスは以前のようにリリアを睨んだりすることはない。
いわゆる世間一般で言うところの【普通】なのである。
たとえば適度な距離感で心地よい空気を与えてくれる友人知人のような関係。
意地悪をするわけでもなく、陰口を言われるわけでもなく、心穏やかに過ごすことができる。
それが今のライザスとリリアだ。
残っている仕事を片づけなければならない、と彼は言った。
リリアも慌てて立ち上がる。
「あなたはゆっくりしていくといい。では失礼する」
「はい」
ライザスはリリアに会釈をしたあとさっさと立ち去ってしまった。
リリアは笑顔で彼の背中を見送ったが、その姿が見えなくなると表情から笑みが消えた。
少しだけ物足りない気持ちになっていることに、気づいている。
ライザスはリリアへの愛情を完全になくしたわけではないようだった。
それは【慈愛】の効果なのかもしれないが、おかげで以前のようにベタベタくっついてくることはなく、周囲はやっと主人がまともな姿に戻ってくれたと喜んだ。
しかし、ライザスはあれから夜をともにすることもなくなった。
邸宅内でばったり会えば会釈をする程度である。
一緒にティータイムを過ごすときは穏やかに歓談するし、晩餐のときも少しばかり会話をする。
ライザスは以前のようにリリアを睨んだりすることはない。
いわゆる世間一般で言うところの【普通】なのである。
たとえば適度な距離感で心地よい空気を与えてくれる友人知人のような関係。
意地悪をするわけでもなく、陰口を言われるわけでもなく、心穏やかに過ごすことができる。
それが今のライザスとリリアだ。