スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
 ゼネシス男爵領に到着したリリアとライザスは男爵に手厚い歓迎を受けた。
 邸宅内を案内されて食事をしたあと、彼から魔鉱石の一部を見せてもらった。

 男爵はきちんと宝石箱に入れた魔鉱石の欠片をリリアに手渡す。
 中に入っていたのは透き通ったクリスタルのような石だった。
 光の加減できらめいて見える。

「まあ、綺麗。触ってみてもいいですか?」
「かまいませんよ。奥さまのためにご用意したものですから」

 男爵にそう言われて、リリアは魔鉱石を手にとってみた。
 すると魔鉱石が突如黄色に光り始めてリリアは目を丸くした。

「色が変わったわ」
「奥さまは風魔法に特化しているんですね。魔鉱石はそれぞれの属性の色に変化するんです」
「そうなの? あら、でも青く光っているわ。まあ、次は赤くなってる」

 魔鉱石はリリアの手の上で次々と色を変えていく。

「奥さまはすべての属性をお持ちではないですか? ほら、次は緑です。地の魔力ですよ」
「そうなの? 風と火と水は使えるけど」
「訓練次第では地の魔法も使えるようになるでしょうね」
「詳しいのね」
「ええ、僕も魔導士を目指して勉強したことがありますから。才能はありませんでしたけどね」

 お互いに笑顔で親しげに話すリリアと男爵を見て、不機嫌な表情になっているのはライザスだ。

「ゼネシス殿、失礼だがあなたはあまりにも妻に近すぎるのではないか?」

< 131 / 174 >

この作品をシェア

pagetop