スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい

「俺には魔鉱石がある。これで魔力を増大して一気に攻めよう。ライザスがどれほど強靭でもたかが人間。俺の力の前では無力に等しい」
「し、しかしあちらには【贄嫁】を送っているのですぞ。侯爵が戦闘スキルを身につけていたら……」

　焦って懸念を口にする魔導士に向かってダンは水魔法を使った。
　彼が放った水の塊は魔導士の頭をすっぽり包み込む。

「うるさいな。お前たち底辺と俺を一緒にするなよ」

　水の中でもがき苦しむ魔導士をしばらく眺めて、ギリギリのところで魔法を解除した。
　魔導士は床に崩れ落ちて咳き込む。

「ああ、そうだ。あの男を倒せば俺の評判は国中いや大陸中に広まるのではないか？　そうすればみんな俺を敬い、媚を売ってくるだろう」

　自信満々にそう言って、ダンは堂々とライザスの前に姿を現わした。
　ダンは火の魔法で巨大なドラゴンの形を作り、ライザスたち騎士団に向かって放った。
　これを食らったら全員生きてはいられないだろう。

「勇敢な騎士たちに祈りくらい捧げてやるよ」

　そんなことをひとり呟いたあと、火のドラゴンは一瞬で消し飛んだ。

「え？」

　放心状態のダンの目に飛び込んできたのは雨のように降り注ぐ水のシャワーだった。