スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
「あの、旦那さま」
「ん? なんだ?」

 満面の笑みで訊ねるライザスに、リリアは複雑な表情で答える。

「まだ日が高いので、あまりベタベタされるのは……」
「誰も見ていないからいいだろう?」
「でも、旦那さまは執務がございますでしょう?」

 ライザスは眉根を寄せて険しい顔でリリアを見つめた。
 少し言い過ぎたかもしれないと思ったリリアは冷や汗をかく。

「仕事のことなら心配するな。リリアが思っているよりちゃんとしている。いや、正しくは結婚したからきちんとするようになった、だな。今まではアベールに叱られてばかりだった」
「そうなのですか?」

 あの温厚なアベールが叱るとは一体どんな感じなのだろうか。想像もできない。

「そうだ。パーティのためにドレスを新調しなければならないな。近いうちに衣装屋を呼びつけよう」
「ドレスならたくさんありますから、その中から選んでも……」
「何を言う? 大陸でもっとも美しい妻を最高に着飾って皆に披露したいんだ」

 ライザスはリリアの髪を撫でながらそんなことを言う。

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