スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
「失礼しまーす。リリアさま……」

 マリーはライザスに押し倒されたリリアの姿を見て3秒ほど無言になった。
 そしてすぐにくるりと背中を向ける。

「お邪魔しましたー。どうぞごゆっくり」
「あっ、ちょっとマリー!」

 ぱたんと扉が閉まり、ふたたび部屋の中でふたりきりになる。
 しばらくの沈黙のあと、ライザスが眉をひそめて言った。

「昼間はなかなか難しいな」
「そうでしょう。ですから、離れてください」

 ライザスはようやく離れてくれて、リリアは乱れた胸もとを綺麗に整えた。

「近くに別邸を買おうか。使用人を置かずにリリアと完全にふたりきりになるための」
「旦那さま、落ち着いてください」

 たとえ誰にも邪魔されない邸宅があったとしても、ライザスが正気に戻ったら無駄になるというのに。

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