スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい

17、パーティの珍事

 王都の宮殿には国中から招待された貴族たちがパーティのために集まった。
 リリアがライザスとともに馬車を降りたとたん、周囲はざわついた。 
 今まで縁談を断り続けていたライザスが妻を連れているのだ。
 当然のことながら周囲の注目を浴びることになる。
 彼らは次々とライザスに声をかけてきた。

「まあ、ゲルト侯爵がご結婚されたというのは本当だったのですね」
「これはこれは可愛らしいお嬢さんだ。失礼、ご夫人ですな」

 貴族たちが興味本位にリリアに近づいてくる。
 それをライザスは制止するように、彼らに向かって真顔で言い放った。

「そうだ。妻は世界一可愛くて美しい」

 一同ぽかーん。
 3秒ほどの沈黙、そして目を丸くしたままライザスを見つめる人々。
 すると、ひとりの男がごほんっと咳払いをして言った。

「め、めずらしいですな。侯爵閣下が女性に惚れ込むとは……」

 ライザスが鋭い目つきで睨みつけると、男はごにょごにょと濁した。
 ライザスは周囲をけん制するようにぐるりと見まわしたあと、急に優しい笑顔になり、リリアの手をとった。

「さあ、行こうか。リリア」
「はい、旦那さま」

 リリアも笑顔で答える。
 周囲はふたりが宮殿に入っていく様子を見送ったあと、すぐにみんなで集まって騒ぎ出した。

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