スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
 リリアの妹たちはそれぞれ赤と黄色のドレスを着ている。
 パステルカラーで目立つが、身につけている宝石はそれほど高価なものではなかった。
 それを見たリリアはすぐに悟る。
 マクベス家はゼネシス男爵家に賠償金を払って今までの贅沢ができなくなったのだろう。
 それなのに、妹たちは妙ににこにこしている。

「まあ、お姉さま! 素敵だわ。そのドレスとっても似合っているわよ」
「この日のために特別にオーダーされたのね。さすがは侯爵さまだわ」

 妹たちのあまりの態度の変わり様にリリアは戸惑いつつも礼を口にする。

「あ、ありがとう」

 妹たちはリリアに近づいてドレスや宝石をまじまじと見つめた。

「お姉さま、すごいじゃない。まさかあのゲルト侯爵を骨抜きにするなんて」
「本当だわ。お姉さまの魅力がやっとわかってもらえたのね」

 ふたりの言葉にリリアは少々鳥肌が立っている。

(あんなに私のことを見下していた彼女たちがこんなに変わるわけがないわ。何か裏があるわね)

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