スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
 ふたりの会話を制止するようにリリアは声を荒らげた。

「出ていきなさい。ドレスを水浸しにされたくなかったらね」

 リリアの周囲に風が起こり、髪が横になびく。
 強風のせいでふたりの髪も乱れてしまった。

「きゃあっ! なんてことするのよ。せっかく整えたのに」
「パーティ会場にいる全員にお姉さまの悪行を言いふらしてやるんだから」

 ふたりがぎゃあぎゃあ騒いでいると、部屋の扉が開いてライザスが現れた。

「何をしている?」

 ライザスは状況を確認するように部屋中を見渡した。
 リリアのドレスが引き裂かれているのを目にして仰天し、その直後に妹たちがハサミを持っているのを確認した。

 ライザスは怒りの形相で妹たちを睨みつけて、一瞬のあと懐にあった短刀を抜いてふたりの眼前にそれを突きつけた。

「わが妻に危害を加えたことをあの世で反省しろ」

 妹たちは「ひいいぃっ!」と悲鳴を上げて、ひとりは腰を抜かし、もうひとりは逃げ出した。
 リリアは慌てて止めに入る。

「旦那さま、私は怪我はありませんわ」
「本当か?」

 ライザスは不安げな表情でリリアのあちこちを見て確認する。

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