スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
「どうかなさいましたか?」
「ええ、なんて好条件なお仕事……いいえ、好待遇な扱いで驚いております」
「ゲルト侯爵家の奥さまですから当然のことでございます」
「たったひとつの役割だけで、こんなにしていただいてもよろしいのですか?」

 リリアがおずおずと訊ねると、今度はライザス本人が答えた。

「その代わり、必ず俺の望むスキルを付与すること。それさえできれば問題ない」
「……はい」

 冷めた顔のライザスをリリアは遠慮がちに見つめて言った。

「あの、スキル付与のことですが、私の意思ではどうにもなりません。侯爵さまの素質や本能的なものも関係してくるので」

 ライザスが眉根を寄せて睨むようにリリアを見つめる。
 その目に少し恐れを感じてリリアはとっさに目をそらした。

「話は以上だ。俺はこれから出かける。アベール、彼女の部屋へ案内してやれ」
「承知いたしました」

 ライザスはリリアと目を合わせることもなく、上着を羽織って、さっさと執務室を出ていってしまった。

(本当に私にはまったく興味がないのね。まあ、いいけど)

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