スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
「ごめんなさい。せっかく旦那さまがくださったドレスが台無しになってしまいました」
「なぜ君が謝るんだ? 謝るのはあいつらだろう? まあ、謝っても許してやらないがな」

 ふたたびライザスにじろりと睨まれた妹は、狼狽えながら逃げるように部屋を出ていった。
 その際、部屋にはいってきたマリーと思いきり肩がぶつかり、妹はべしゃりと床に転んだ。

「あらま、マクベス令嬢。これは失礼いたしました。わざとだけど」
「このっ……ゲルト侯爵家は下品な人間ばかりだわ! お姉さまにお似合いだわよ!」
「負け犬が吠える吠える」
「きいぃーっ!!」

 妹たちは転びそうになりながら逃げていった。
 マリーは部屋に入るとするリリアに謝罪の言葉を口にした。

「申し訳ございません。私が離れたばかりにこんなことに」
「油断していた私が悪いのよ」
「どうしましょう? 一応着替えのドレスはありますけど」
「そうね……」

 リリアは部屋中を見まわして、花瓶に花が生けられているのを見つけた。

「そうだわ」

 魔鉱石を使うのはやめておこうと思ったが、緊急事態だ。
 リリアは今つけているネックレスを外し、魔鉱石のペンダントを首から下げる。

 そして、魔力を開放した。

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