スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
 リリアはアベールとともに執務室を出て、これから暮らす部屋へ向かう。
 途中、廊下でライザスが使用人を呼び止めて注意をしているのを目にした。
 使用人は深々を頭を下げている。

「埃が落ちていたようです。旦那さまは大変細かく厳しいお方ですので、少しの失敗も許せないのです」
「え……?」

 リリアはげんなりした顔をする。

「しかし、やるべきことをきちんとこなしていれば大丈夫です」
「はぁ、わかりました」
「それではお部屋にご案内いたします」

(ストレス、溜まっていそうね)

 リリアはうな垂れている使用人たちを見て気の毒に思った。


 アベールに案内された部屋は実家より広く綺麗だった。
 バルコニーに続く大きな窓には新品のカーテン、棚やテーブルも新調したようでピカピカだった。

 もっともインパクトがあるのは大きな天蓋付きのベッドである。
 実家では使用人が使うような古いベッドに薄っぺらい生地の布団だったので、このベッドにあるふかふかの布団はめずらしく、リリアはついそばに寄って触ってしまった。

 もちろん、ふわふわで触り心地は最高だ。

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