スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
 それを聞いたライザスは首から頭のてっぺんまで真っ赤になった。
 何のスキルもない状態であれほどベタベタとリリアに接していた自分が急に恥ずかしくなったのだろう。

 ライザスの苛立ちの矛先はローズに向けられた。

「なぜあなたはすぐに俺に知らせてくれなかった?」
「だって、知ってしまったらライザスは元に戻るでしょう? あなたって極度の恥ずかしがり屋さんだもの」
「うるさい! そうやって俺を見て面白がっていたんだろう?」
「当たり前じゃない。こんなライザスの変貌ぶりを楽しまないでどうするのよ」

 扇をひらひらさせながらそんなことを言うローズに一同呆気にとられた。
 だが、リリアだけは笑みを浮かべて涙ぐんでいる。

 苛立ちが収まらない様子のライザスにリリアはそっとその手を握って微笑んだ。

「旦那さま、ふたりきりでお話したいことがございます」

 ライザスはいまだ周囲へ怒りのオーラを放っているが、リリアに言われて渋々了承した。

「やっぱり拗らせていただけでしたね」

 とマリーが呟いた。

「わたくしは大変嬉しゅうございます」

 とアベールはなぜか泣いていた。

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