スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
 リリアは愛など欲していなかった。
 ただ、マクベス家から逃れられるのならそれでよかったし、最初にこの家に来たときに突きつけられた条件はあまりに好待遇だったので、それ以上のことを望んだりしなかった。

 それなのにライザスに好意を持ってしまったのは自己都合に過ぎない。
 しかし、彼は意外なことを口にした。

「実はあの婚姻の儀式のときに初めてあなたの晴れ姿を見て、あなたとまっすぐ向かい合って、驚いたと同時に惹かれている自分にも気づいた」
「えっ……?」
「美しい人だと思った」
「だ、旦那さま……?」

 リリアは燃えるほど顔が熱くなり、目をそらした。
 ライザスはリリアの肩に手を添えて、笑顔で告げる。

「スキルなどという力は必要なかったのだ。俺は最初からあなたを愛していたのだから」

 ライザスの思わぬ告白にリリアは突然涙がぼろぼろとこぼれ落ちた。
 ぎょっとしたライザスは急に慌て出す。

「な、なぜ泣くんだ? 嫌だったのか?」
「違います。嬉しいのです。てっきり私の片想いだとばかり思っていましたので」

 ぽかんとするライザスに向かってリリアが満面の笑みで告げた。

「私もずっとお慕いしておりましたわ」

 その言葉を聞いたとたん、ライザスはリリアを抱き上げた。

「旦那さま?」
「リリア、大好きだ。一生君を愛することを誓う」

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