スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
 リリアはマリーの助言のおかげで、ライザスがダイニングルームに顔を出す15分前に席に着いていた。
 あとから現れたライザスはリリアの顔も見ずに自分の席に着いて食事を始めた。

 マリーの言う通り、彼は無言だった。
 周囲の使用人たちも黙っている。
 ただ、かちゃかちゃと食器の音だけが響きわたる異様な光景だ。

 リリアは少々気まずかったが、料理をひと口食べたとたん目を輝かせた。

(美味しい! こんなの実家では食べたことがないわ!)

 フルーツと野菜が交じったサラダにさっぱりしたドレッシングがかけてある。
 添えてあるのは肉をムース状にして焼いたテリーヌだ。
 スープはエンドウ豆をすり潰したもったりしたポタージュだった。これも最高に美味い。

 リリアはうっとりした顔で食事を楽しんだ。
 あまりに夢中になっているため、ライザスがチラ見していることに気づかない。
 しかし、そばで控えている使用人たちはライザスの視線に気づいており、全員がハラハラしながらリリアを凝視していた。

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