スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
【贄嫁】を迎えた主人はスキルと自身の子を手に入れたあとは愛人を作って好き放題にやっているのが現状だ。
 それが当たり前だと思っているので、スキル付与に貢献したあと自由に過ごしていいなどというのはリリアにとってこの上なく贅沢なことだった。

「旦那さまの次の遠征はひと月後だそうですよ。なので、今はみんな耐えるときなのです」
「遠征に行かれたら戻られるのはいつなの?」
「情勢にもよりますが、だいたい3ヵ月から半年くらいは戻られませんね。だから、そのあいだ私たちは解放されるんです。やるべきことをやっていれば、あとはお祭り騒ぎです」

 わくわくするような顔のマリーを見て、リリアは思った。
 ずっと監視下に置かれて気を張りつめた生活をするくらいなら厳しいことを言われても自由が約束されているほうがいいのだと。

 マクベス家の離れに閉じ込められているより、ここの生活のほうが楽しく過ごせそうだ。
 夫は口も利かず目も合わせてくれないような人物だが、怒らせるようなことがなければ快適な暮らしができるだろう。

 そんな悠長なことを考えていた。
 このときは――。

< 24 / 174 >

この作品をシェア

pagetop