スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
 ライザスはリリアに覆いかぶさるようにしてじっと見下ろした。
 そして目線はそのままで、手先だけはリリアの寝間着(ナイトドレス)の胸もとを探り、指先でするりとリボンをほどく。
 リリアはどきりとして、慌てて声を上げた。

「ちょっと……旦那さま、落ち着いてくださ……」
「俺は落ち着いている。あなたが落ち着いてくれ」
「落ち着けません!」

 同意もなく夫婦の契りを決行しようとするのだ。
 つい先ほどまでリリアに興味もなさそうな様子だったのに。
 それどころか、晩餐(ディナー)のときは不機嫌そうな顔でひとことも口を利かなかったくせに。

 そもそもリリアは【贄嫁】と呼ばれる特殊な存在で、夫に利用されるためだけに嫁いだ身である。
 子作りはしないと最初に言われていたのだから、心の準備など到底できておらず。

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