スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
 あの儀式の日からリリアを見るたびに頭がぼんやりして体は熱を帯びた。
 今まで以上に彼女が美しく見えて、鼓動が高鳴り動悸がするのだ。

 羞恥のあまりリリアとまともに目を合わせることもできない。
 それなのに、いつも彼女に会いたい衝動にかられている。

「こんな感情、俺には必要ない」

 ライザスは苛立ちながらワインをぐいっと飲み干し、真っ赤な顔でふたたび誰もいない壁を睨みつけた。
 だが、今度はそこにリリアの幻影が見えてしまうようになった。

「ああっ……やめろ! 出てくるな! あなたは俺にとって邪魔でしかない!」

 壁の絵は変わらず笑っているように見えた。


 ライザスはリリアと極力会わないようにしたいので彼女の予定をすべて報告するようにとアベールに命じた。
 そして、ある日のことだった。

「本日のリリアさまのご予定は朝食後に書庫へ行かれるようです。そして庭園の散歩をされたあと自室でティータイム、それから衣装屋の主人が来訪され、新しいドレスの試着をされるようでございます」

 ライザスはひと通り聞いてから「わかった」と返答した。
 要はリリアが屋敷をうろつくあいだ、自分は部屋にこもっていればいいわけだ。

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