スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
 衝動的に彼女の前に出ていきたかった。
 そして周囲の目もはばからず、彼女を抱きしめたいと思った。
 そのまま自室に連れ戻ってもいいだろう。
 何も問題はない。
 なぜなら、自分たちは夫婦なのだから。

(やめろ……そうじゃない。俺はそんなことを望んではいない……!)

 欲望は次々とあふれてくる。
 彼はそれを打ち消すように必死に理性を奮い立たせた。
 だが、それも無理だった。
 ふたたびリリアに目をやると無性に触りたい衝動にかられるのだ。

(このままではただの変態になってしまう)

 ライザスは自制心を保つため、あえてリリアから目をそらした。
 そして本棚に寄りかかるようにして床に座り込み、何度か深呼吸をする。

(これはあの妙なスキルのせいだろう。スキルを書き換えれば収まるはずだ。どうせすぐにここを出る。あの娘と離れればこの感情は薄れるに違いない)

 しばらく床に座り込んだまま自分を落ち着かせていると、ふいに声をかけられてしまった。

「旦那さま、大丈夫ですか? お加減でも悪いのでしょうか?」

 見上げるとリリアがこちらを覗き込んでいて、ライザスは心臓が飛び出すほど驚愕した。

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