スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい

2、虐げられてきた実家を出る日

 リリアは18歳。
 マクベス伯爵家の令嬢で魔導士だ。

 しかし魔力が非常に弱く、一流の魔導士になることはできなかったので、このたび神殿の掟により【贄嫁】とされてしまった。
【贄嫁】とは高位貴族に嫁ぎ、魔力を解放して配偶者となる相手にスキルを付与する役目である。

 リリアはこうしてゲルト侯爵家のライザスに嫁ぐことになった。


 リリアは嫁ぐまでのあいだ、いつも通り離れの邸宅で静かに読書をして過ごした。
 両親はリリアに嫁入りの準備などしてくれず、当然見送りもない。
 これまでずっと邪魔者扱いされてきたリリアにとって、彼らに期待することなど何もなかった。

 ただ静かに出ていきたかっただけだ。
 それなのに、最後までリリアに対する嫌がらせは続いた。

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