スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
 今まで冷淡な顔しか向けてくれなかった夫の初めての笑顔とか、最高に萌える。
 暗がりの中、月明かりがちょうど彼の顔を照らし、鈍色の髪は白銀に輝いて見えた。
 リリアはその綺麗な顔にうっとり見惚れてしまう。

(だ、だめよ。これはあのスキルのせいだから。彼の本物の感情ではないのだから。本気になっちゃだめ)

 心の中で何度も自分に言い聞かせる。
 けれど脈打つ鼓動はどんどん激しくなり、体はじわじわと火照っていった。

(近くで見ると本当に綺麗だわ)

 まるで縛りつけられたように、彼の顔から目がそらせなくなる。
 するとライザスも、同じことを口にした。

「リリア、君は可愛くて綺麗だ」
「え?」
「キスをしてもいい?」
「ええっ!?」
「嫌なのか」
「そ、それは……」

 突然の申し出に困惑する。
 なぜならこれは一時的な感情によるものだとわかっているから。
 それでも、少しくらいならいいかなと思えるほど、リリアはもうその気になっていた。

「え、えっと、ほっぺにちゅーくらいでしたら!」

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