スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
 それからもライザスと出くわすことが多かった。
 庭園で散歩しているとき、書庫にいるとき、ただ邸宅内を歩いているとき。
 そのたびにライザスは以前よりも冷たい態度をとった。

 それでもリリアは負けなかった。
 どんなに無視をされようとライザスに笑顔で接した。

 期待などしてはいけないとわかっているのに、リリアは彼が遠征に行くまではきちんと笑顔で接しようと努めた。
 しかしライザスから話しかけられることはなかったし、食事の時間も無言で、彼はいつも通りリリアを睨んでダイニングルームを出ていくのだった。

(あれが彼の精一杯なのよ。必死に理性を保っているの。遠征前に邪魔をしてはいけないわ)

 リリアは何度も自分に言い聞かせたが、虚しさが込み上げてたまらなかった。

 まるで失恋でもしたような気分だ。
 けれど、離れていればこの感情も薄れるに違いない。
 少し寂しいけれど仕方のないことだ。
 本来あのような甘い夜はあり得ないことなのだから。

「リリアさま、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ」

 マリーに訊かれたリリアは笑顔で答えたが。

(うそ。旦那さまの塩対応が地味につらい)

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