スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
「ふたりきりで食事がしたい。お前たちは下がれ」

 ライザスがそう言うと、料理長も使用人たちもぺこりと頭を下げて退室した。
 彼らがいなくなってしんと静かになると、ライザスは自分の椅子をリリアのとなりへ移動した。

「旦那さま?」
「やってみたいことがある」
「はい、なんなりと」
「その……食べさせてもらえないだろうか?」

 真面目な顔で頬を赤らめながらそんなことを言うのだ。

(か、可愛い~旦那さまが可愛い~)

 リリアは感動のあまり目を輝かせながら笑った。
 ライザスは慌てて言い訳を口にする。

「友人が以前、恋人にそうしてもらうと話していた。正直バカらしいと思って相手にしなかったが、今は無性にそれがやりたい」
「はい、わかりました。では、あーんしてください」

 リリアがスプーンでスフレオムレツをすくってライザスの口もとへ近づけると、彼はそれをぱくっと食べた。

「どうですか?」
「美味い」
「ふふっ、それはよかったです」
「では、あなたも」
「え?」

 ライザスが同じようにスプーンでオムレツをすくってリリアの口もとに近づける。
 リリアは頬を赤らめながらそれを食べた。

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