スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい

　その場にいた使用人たちは大騒ぎで今起こったことを他の者たちに言いふらしてまわった。

「旦那さまの変貌ぶりがすごいの」
「奥さまのおかげだわ」
「本当にご結婚されるとこんなに変わられるのね」

　またあるときは、ライザスの剣術訓練をリリアが見学に行ったときのこと。
　ライザスは相変わらず周囲の騎士たちを圧倒していた。

「もう勘弁してください」と言う彼らに向かって、いつもなら「根性を叩き直せ」と睨みつけるのだが、今日は違った。
　ライザスは汗を拭いながらリリアへ目を向けると、にかっと爽やかな笑顔で手を振ったのだ。
　それを見た騎士たちはあんぐり口を開けて固まった。

「え？　キャラ違くね？」
「変わりすぎて別人だ」
「結婚効果すげえぇ」
「俺も嫁さんほしいぃ」

　ライザスの変貌ぶりに全員が驚いたが、おおむね好意的な印象だった。