スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい

　その言葉の意味を、リリアはすぐに理解した。
　男は戦場に行く前に、もしかしたら死ぬかもしれないという本能が子孫を残そうとすると聞いたことがあったから。

　たとえこれが偽りの上で成り立つ愛情であっても、今のリリアは受け入れる覚悟ができていた。
　そもそも愛情がなくても夫との子をなすのは本来の【贄嫁】の務めである。

　それらの理由がなかったとしても、リリアは心から夫を受け入れたいと思っていた。
　夫に対して恋愛感情が芽生えてしまったのか、あるいは義務感のほうが強いのか。
　そんな余計なことは、今は考えなかった。

「はい。いくらでも差しあげますわ」

　リリアはライザスの手を握り、にっこりと微笑んで言った。

　月の見えないこの夜、ふたりは夫婦の契りを交わした。