スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
 ライザスは女性に興味がないと自他ともに確信していたようだが、実際にはこのスキルが付与されてリリアに興味を示した。
 本能的には女性への興味は少なからずあったということだ。
 本人が自覚していなかっただけで。

 その欲求がリリアに向けられているのは、ただ単にリリアが【彼の妻】であるからだろう。
 妻が他の女性だったら、彼の【溺愛】はその者に向けられているはずだ。
 
 本物ではない愛情。
 わかっていてもリリアは嬉しかった。
 こんな手紙のやりとりをするのも新鮮で、まるで遠距離の恋人と淡い恋をつむいでいるような気分だった。

「そんな不確定なものなのに貴族たちがこぞってスキルをほしがる理由がわかりませんね」

 マリーは肩をすくめた。

 リリアにはよくわかる。
 貴族とは欲深いものだ。
 あれほど財があって贅沢三昧の暮らしを送っていても、めずらしいものがあれば手に入れたいし、金ならいくらでもほしがる。
 彼らの欲は無限なのだ。

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