スキル【溺愛】を獲得した冷酷無慈悲な侯爵は契約結婚の贄嫁を愛でたい
「結婚したとは聞いていたけれど本当だったのね。挙式はしないの?」
「ふたりで済ませた」
「まあ、もったいないわ。お披露目するべきよ。だって、こんなに綺麗なお嬢さまですもの。きっとみんな驚くわよ」

 その言葉にライザスは眉根を寄せて表情を歪めた。
 リリアはただならぬ気配を感じてぞくりとする。

(ああ、これはきっと、余計なことを言うな。口を出すな。という顔だわ)

 リリアが不安な顔をしていると、ライザスは意外なことを口にした。

「ああ、そうだな。ぜひこの美しいわが妻の姿を親戚に自慢したい。茶会に招待してやろう」

 ライザスの発言にリリアは「え?」という反応をし、ローズは「あら」と微妙な反応をした。

「何だ? 何か問題でもあるのか? 侯爵家の当主が親戚一同に妻を披露しようと言うのだ」
「まあ、当然のことよね。でも、あなた本当にライザスなの?」

 ローズが怪訝な表情で見つめるので、ライザスは不機嫌な顔になった。

「まるで俺が頭でも打って変人になったかような言い草だな」
「そこまでは言っていないけれど、変貌ぶりが凄まじいわね」

 ローズはリリアをじろじろ見て「ふうん」とだけ口にした。
 あまりよい印象は抱かれていないのだろうとリリアは容易に察し、ただ笑顔を向けるだけだった。

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