タイムトラベル
『タイムトラベル』

 鏡に向かってネクタイを結びながら、彼は久しぶりの再会を夢見ていた。
 恋愛も、不条理も、人の選別も、ある程度のことは学んだから、大人になった彼は時空を超えることが可能になった。
 どうすれば、不条理やストレスを回避できるかを、どうすれば相手が自分に惹かれるかを知っているから、いまなら、もし、あのとき、体育館裏で失恋したあの子に振り向いてもらうことさえできるはずだ!
 彼女好みの容姿になって、この言葉が彼女を魅了し、そうすれば彼女は僕に振り向いてくれる、……ああ、知ることとは、なんて悲しいのだろう!
 意気揚々と彼女の横へ座り、実践を試みたが、ひとつとして彼女は、彼の罠にはかからなかった。
 彼は見落としていた。時空を超えてきたのは彼女も同じだということを。……
 ネオンがまばゆい帰りしなに、最初から、彼女とは結ばれない運命を彼は悟った。
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

お洒落

総文字数/493

ノンフィクション・実話1ページ

表紙を見る
再会

総文字数/740

恋愛(純愛)1ページ

表紙を見る
乳房

総文字数/331

青春・友情1ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop