恋の甘さはヘビィ級
✱下校中、車内✱
ケイ「聞いたよレオン君」
眼鏡を取りながら、ケイが口を開いた。
下校の車中でだった。お迎えの車には、私とメイ、レオにケイ。ケイは珍しく、黒コンタクトを外してその青い瞳を覗かせていた。
メイとケイも、幼少期から大人に連れられてパーティーに来る常連さんだった。だから私含めてこの4人は、学園でも特別な仲間なの。---
ケイ「あのB組の子をこっぴどく振ったそうじゃないか」
レオン「あー」
レオンは上の空になった。
ケイも同じクラスであるが、生徒会の集りがあり、教室にいなかったため後から噂で聞いたらしい。
ケイ「あんなに可愛い子を」
もうっ!とケイが喝を入れた。
続けて「僕だったらな〜、どうするかな〜」と腕を組んでモゴモゴと言い始めた。
レオン「ケイ」
ケイ「うん?」
レオンが首を空でも持ち上げるかのように、ケイ見やった。
レオン「婚約者、いるでしょ」
ニコッと笑みを浮かべたレオからは冷風でも吹いているかのようだった。
---ケイは、メイと婚約をしている。---
私はメイを横目でチラリ、と見た。
メイは両肘をひざにつき、両手で顎を支えて小さくなっていた。
173cmあるメイがとても小さく可愛らしく見える。身長とは見合わない幼顔が、更に愛らしく。
ケイ「レオンもだよね」
ふくれっ面のケイが、レオの脛に軽く一蹴りする。
レオン「…フっ」
レオンは軽くあしらって、長い脚を組んだ。
180は越える勢いの俺様レオは、今日も私達の前にだけ本物の姿を見せている。
---私もその脚を蹴り上げたかった。
その時、くしゃくしゃ、と私の頭をレオの手が撫で回してきた。
ゆりあ「もう!」
---髪型が崩れる、と私はむくれた。
あの日から私はレオの前にいる時、決まってツインテールにする。
大人に決められた「仲良く」のルールも、今となっては重く重く伸し掛るだけしかない法律上のルールと化して。
---私達は婚約者となった。---
ゆりあ「もういっそ、伸ばそうかしら」
---ロングヘアーはこのうねった髪ではケアが大変になる。そう思って、あえて中途半端に伸ばさないできた。
けれどレオの好みなのであれば。---
レオン「いいんじゃない?」
私の崩れた髪を、ヘアゴムから解放した。
あの頃から変わらない栗色の髪を、レオは、メイとケイもいる中で脇目も振らずにキスを落とした。
レオン「このド天然さん」
そして髪に指を通した。