レンズ越しの君へ
目の前が白く曇る。

私はその原因、愛用歴三年の赤い縁のメガネを外し、眼鏡拭きで拭く。

ピカピカになったレンズに満足。

「なーほ!」

「わっ!」

背中をドンとおされ、心臓が飛び跳ねる。

「冴香…おどかさないでよ。」

ニヤニヤとしているのは小学校からの友達、栗原冴香。

ショートカットで身長も私より十センチ以上高い冴香は女子バレーボール部キャプテン。

女の子のファンも多い。

「だって菜穂がまた暗い顔してるからさ!新学期始まってまだ一週間なのに!」

私、そんなに暗い顔してた?

元々の人相がそう見えるのかな。

「にしても、今年も同じクラスになっちゃったねー、速水と!」

その名前にドキッとしてしまうのは、まだ未練があると認めることになる。

教室の一番後ろの席でキラキラ輝いて見える四人組。

女子の視線もひときわ集中して集まるグループ。

スポーツマンで爽やかな雰囲気の大本君。
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