レンズ越しの君へ
「どこが苦手?」

「全部!」

…そうくるのね。

「…じゃあ、一番初めからやりましょう。1ページ目を開いて。」

「ねえ、菜穂センセ、こっち向いて?」

「へ?」

反射的に顔を向けてしまう馬鹿なわたし。

スッと手が伸びてきて、急に視界がぼやける。

「…へえ、やっぱりない方が可愛い。」

「ちょっと!返して!」

目の前がボヤボヤして不安になる。

「なんで?こんなにかわいいのに。」

可愛くなんてあるわけ無い!

「外しちゃったら何も見えないの!だから…」

「へえ、どれくらい目が悪いの?これ見える?」

涼太君が指をたてているらしい。

けど、何本かは見えない。

「じゃあこれくらいは?」

ずいっと距離が近づいて。

顔が!

近いよ!

「さ、三本!って、もういいでしょ!早く勉強始めるよ!」

「センセってほんと、かわいい。」

その後も結局いろんな質問されたりして、最後まで涼太君のペースに飲まれた私なのでした。
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