レンズ越しの君へ
5月も半ばの土曜日、午後一時。

バイトの時間のはずなのに、私は駅前の時計台の下にいた。

「せーんせー!」

可愛らしく手を振って登場するのはニコニコ笑顔の涼太君。

今日は約束の日。

水曜日の授業の日、涼太君が自慢げな顔で取り出したなにか。

それを机に置いた。

「社会、95、英語、98、数学、100!?」

100点!?

だって涼太君が一番苦手な科目だって言ってたのに!

100点だなんて、早々とれる点じゃないよ!

「すごいね!よく頑張ったね!」

私も嬉しい。

だってあの日から、涼太くんはちゃんと真面目に勉強するようになって。

時間が終わっても私に質問をしたり、家庭教師の時間以外でも自分で自主勉強をしたりして、すごく頑張っていたから。

「ね、せんせ。ご褒美、忘れてないよね?」

ご、ご褒美!

すっかり忘れてた!

「俺、先生とデートするために頑張ったんだよ?だから、ね?」
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