レンズ越しの君へ
それをノーとは言えなかった。

だって目的はなんであれ、涼太くんが一生懸命頑張ったのは事実だから。

「外で先生はやめよう?なんか周りからの目が…」

「えー、じゃあ菜穂?うん、なんか恋人っぽくていいかも!」

それもちょっと…

「よし、行こう!」

えっ!?

「どこに行くの?」

「ついてからのお楽しみ!」


連れて来られたのは眼科だった。

デート先眼科?

もしかして、最近流行ってるの?

眼科デート。

「何ポカーンとしてんの。ほら、保険証ある?」

そういえば何故か昨日保険証持ってきてね、って言われてたんだ。

「じゃあ、いってらっしゃい、菜穂ちゃん!」

背中を押されて、診察室へ。

それからはもうされるがまま。


「ではまた目に異常が出たり、痒くなったりしたら来てくださいね。」

優しい笑顔で送り出してくれた助手の人。

なんだか顔がスースーする。

いつもつけてるはずのものがないから。
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