レンズ越しの君へ
トイレの鏡に映る自分の顔。

真っ赤だ。

私、おかしいのかな…


熱を持ったまま、トイレを出る。

ドンッ

前を見てなくて、誰かにぶつかってしまった。

「あれ?もしかして風見さん?」

「えっと…神崎先生!」

そこにいたのは数学担当の神崎朔先生。

その恐ろしいほどの美貌と色気、そしてわかりやすい授業で去年赴任してきたとは思えないほどの生徒からの人気を得ている。

「メガネじゃないんだね、雰囲気変わるね。」

やっぱり、変かな?

「じゅ、受験生が何やってんだって感じですよね、あはは…」

「いや、たまには息抜きも必要だよ。風見さん中間テストも頑張っていたし、そういうオンとオフをきっちり切り替えられることが受検生にとって一番大切なことだからね。」

オンとオフのきりかえ、か。

確かにそうだな。

「朔ちゃん、行くよー!」

「はいはい、じゃあね、風見さん。」

小さくて可愛い女の人に呼ばれて、先生は行っちゃった。
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