レンズ越しの君へ
彼女さんかな?

「せーんせ。」

「ひゃっ…!りょ、涼太君!?」

いつのまにか後ろにいた涼太君が私の肩に腕を回した。

後ろから抱きしめられるかたち。

しかもこんな、トイレの前で!

「は、離して!」

「今のやつ、だーれ?」

今のって、神崎先生のこと?

「学校の先生だよ、数学の…」

「知ってる、この前家に来たもん。」

あっ、そうか。

聡太君の担任なんだっけ。

「何話してたの?」

「え?あっ…いつもと雰囲気違うねって…」

すると涼太君がやっと腕を離してくれた。

「やっぱ明日から、眼鏡にして。ていうか、俺の前以外では素顔見せるの、禁止ね。」

な、なにそれ!

コンタクトに強引にしたのは涼太君なのに。

「菜穂は可愛いんだから、自覚しなよ。」

「そ、そんなこと言われないよ…」

なんだか翻弄されっぱなし。

その目で、話し方で、私は捕まえられそうになるの。
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