レンズ越しの君へ
帰り道、隣を歩く涼太君。

「ね、先生、今日楽しかった?」

今日は初めてのことばかりだった。

初めて男の子と二人で出かけた。

初めてコンタクトにした。

初めて、アーンっていうものをした。

色んな感情も、ドキドキも体験した。

「…うん、楽しかった。ありがとう、涼太君。」

すると涼太君がまた、一歩私に近づいて。

そのたび心臓が大きく鳴る。

「なんなの、ほんとかわいい。ね、ぎゅってしていい?」

えっ!?

返事をする間もなく、私は涼太君の腕の中にいた。

今日はどれだけ初めてのことを経験すればいいの!

「あ、あの…涼太君…」

ここはひと気が少ないからって、外でこういうことをするのは…

「俺、本気になっちゃいそう。なってもいい?せんせ。」

本気になっちゃいそうってどういう意味!?

「覚悟しといてね?せーんせ。」

その可愛い笑顔に、私はなんだかゾクッとしてしまった。
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