レンズ越しの君へ
それから次の水曜日。

私は何と無く緊張感を持って浅丘家へ。

「涼太は部屋にいるから!」

志歩さんに促され、涼太君の部屋へ。

ドアの前で一つ、深呼吸。

コンコン

ノックをする。

「…先生?」

ドアの向こうから聞こえてきた涼太君の声。

「うん。」

「入って。」

ドアを開けると、涼太君はベッドに寝転んでいた。

「夏休みの宿題、進んでる?」

「もうほぼ終わった。」

「そっか…」

なんだか気まずい雰囲気。

「じゃあ何しようか?」

すると涼太君はベッドから起き上がって、私の方へ歩いてきた。

「…キス、したい。」

へ?

な、何を言って…

「そういう冗談は置いといて、勉強を…」

「やだ。俺、菜穂とキスしたい。」

涼太君は私の肩をつかんだ。

同じくらいの目線だったはずなのに、この夏休みで背が伸びた?

少し見上げるくらいになってる。

「やだっ…離して、」

「離さない。」
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