レンズ越しの君へ
夏休みも終わり、いよいよ受験本番に向けて三年生は模試やテストが多くなった。

休み時間に単語帳を開いて勉強する人も少なくない。

「風見さーん、ここ教えて!」

この前の席替えで隣の席になったのは園田君。

明るくてクラスのムードメーカーの彼は地味な私にもフレンドリーに話しかけてくれる。

「この問題、難しくってさ!風見さんはこの前の実力テスト、数学クラストップだったって冴香様が言ってたから!」

園田君はなぜか冴香のことを冴香様、と呼ぶ。

「これはこの公式を利用して…」

園田君はふんふんと頷きながら一生懸命聞いてくれる。

「風見さん、教えるの上手だね!先生になれるんじゃない?」

先生、その言葉に思い出してしまう。

あれから変わらず、毎週週に2日、浅丘家に通っている。

涼太君は二時間、机に真面目に向かってる。

質問があればたまに教えるし、でももともと頭がいい涼太君は最近ではそんなに質問もしてこなくなった。
< 43 / 83 >

この作品をシェア

pagetop