レンズ越しの君へ
瀬戸口君と二人になっちゃった。

シーンとした空気が気まずい。

「あの、さ…」

瀬戸口君の声がやけに大きく響く。

「えっと…、その…この前のことなんだけど…」

返事しないといけない。

それはわかっている。

だけど、どうすればいいのかわからない。

断ればいいんだよ。

だって私、今は好きな人とか、そういうのよくわからない。

「返事、ずっと待ってる。だから焦らないで。」

瀬戸口君はそう言うと教室から出て行った。

ずっと、かあ。

その言葉に甘え続けるわけにはいかないんだ。

下を向くと眼鏡がずり下がってきて、うっとおしい。

私も、帰ろう。

モヤモヤが晴れないまま、わたしは浅丘家へ。

チャイムを押すと恵海ちゃんが出迎えてくれた。

「おにいちゃん、お部屋にいるよ!」

今日は何をしよう。

最近はわたしなんていなくても、涼太君はちゃんと勉強してるから。
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