レンズ越しの君へ
そんな私の平凡な日常が一転したのは、新学期が始まってから二週間、ようやく色々落ち着いてきた頃。

いつものように生徒会室に少しだけ寄って、そのまままっすぐ家に帰る。

冴香はバレー部のキャプテンで放課後は忙しいから、テスト期間くらいしか一緒に帰ることはない。

たまに同じ生徒会の一ノ瀬君(双子の弟、優君の方)と一緒に途中まで帰ることがあるけど、今年度から会長になった一ノ瀬君は今まで以上に忙しそう。

手伝えることは全部手伝いたいけど、あまり手を出してしまっても逆に邪魔かもしれない。

だからたいていは一人で帰る。

家に帰ると玄関に男の人用のスニーカーと華奢なパンプスが並べてあって。

ということは…

「お兄ちゃん、真子ちゃん!」

リビングに入るとテーブルには楽しそうに談笑しているおばあちゃんとお兄ちゃん、そして真子ちゃん。

実は二年前、高校入学と同時に私の両親は海外に出張することが決まって。
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