レンズ越しの君へ
家庭教師をやめてから数日。

文化祭を間近に控える教室内は少しずつ受験モードへ。

「菜穂ー、ここわかんないよ!」

冴香も部活を引退して、私はほぼ毎日一緒に勉強している。

「菜穂先生!」

その呼び方に、ドクンと心臓が鳴る。

もちろん、呼んだ主は私が想像している人ではないのだけれど。

「園田、またあんた菜穂に質問?菜穂は私の専属家庭教師なんだから、速水にでも聞きなさいよ!」

「うるせーやい!大和はサッサと帰りました!それより冴香様、あの恨みは俺、一生忘れねえからな!」

園田君が冴香を恨めしそうに見た。

あの恨み。

それは先月の半ばに行われた文化祭。

ミスコンにエントリーされたはずの園田君の姿は2日目のミスコンのステージ上にはいなかった。

ステージの上で三年生代表として立っていたのは生徒会長、一ノ瀬君。

本人はかなり戸惑っていたけど、なんでもなるみちゃんがどうしてもってかなり押したらしい。
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